退職を申し出ると損害賠償支払いを命じられた
■解決年月:2014年2月 ■職種等:運転手/契約社員
■勤続年数:11か月 ■女性
長距離トラックの運転手。労働者が退職を申し出たところ、入社時の貸付金(初回の給料日までの無収入を補償するため)の一括返済と、業務中の事故の相手への損害賠償金を退職まで全額支払うよう命じられた。
業務中の事故は、労働者側の過失割合100%であったが、事故前の1ヶ月間の残業時間等が100時間を超え、26日間連続勤務した後という極度の過労状態で起こしたものであった。使用者は、労働基準法違反に加え、トラック運転手らに適用される大臣告示「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」の拘束時間(始業時刻から終業時刻までの労働時間と休憩時間の合計時間)の限度や休息期間(勤務と次の勤務の間の時間)の制限等、数多く違反していた。したがって、使用者の重大な安全配慮義務違反のある中で起った事故の損害を全額労働者が負担するのは余りに不合理というものであり、損害賠償の労使の負担割合を団交で協議すること、未払残業代等の支払いを要求して団交を申し入れた。未払残業代については、組合員が2ヶ月分だけ保存していたタコメーターの記録を基に全ての期間の残業時間を概算し請求することにした。
組合員の賃金は、売上から経費等を差し引いた額に一定率を掛けて算出した額が支払われており、所定内賃金と割増賃金の区別が曖昧で、1時間当たりの単価が不明確であった。団交申し入れ後、会社は組合員の労働時間の記録を提出し、長時間労働の事実を認めたが、残業代計算の基礎となる時給を著しく低く算定し、組合の要求額からかけ離れた金額の支払いしか回答しなかった。事故の賠償金の組合員負担については労働者負担4分の1を回答した。
労基法並びに自動車運転者の労働時間基準等の重大違反の事実を追及し、残業代支払い額の歩み寄りを迫り、合意した。