そごう・西武労組のストライキ闘争に係る勇気ある決断について
<書記次長 進藤 勇志>
各自マスコミにて報道されているとおり、2023年8月31日に私たちと同じく連合に加盟するそごう・西武労組が主な大手デパートではおよそ60年ぶりとなるストライキを決行いたしました。
そごう・西武の売却は、組合との協議が平行線をたどったままストライキの翌日に完了する異例の事態となっています。(この使用者側の対応にはこの場で筆者も抗議します。)
■ 下記はNHKの本闘争をまとめた記事となっています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230831/k10014179071000.html
そごう・西武労組の決断はとても勇気の必要なこと
今回のそごう・西武労組の皆様の決断は大変勇気ある決断であったと感想を持ちます。また、その団結力の高さや、これまでの活動に敬意を表します。
本闘争については、雇用危機に陥った際に労働組合の行える究極の手段を選択せざるを得ないほどに、使用者が強行に売却を進めたものとも感想を持っている次第です。
そもそも「ストライキ」ですが、名前は知ってるけど具体的にはよく知らない。
と、いった方が我が国ではほとんどではないかと思います。ちなみにストライキは日本語表記だと同盟罷業(どうめいひぎょう)といいます。
下記、ストライキに関する解説となります。労働法の知識がない方でも分かっていただけるよう、極力かみくだいて説明します。
読んでいただければ、何故筆者がそごう・西武労組の決断を勇気あると表現したと共に、究極の手段だと表現したかを分かっていただけるかと思います。
そもそもストライキとは?
労働者による争議行為の一種で、労働法の争議権の行使として雇用側(使用者)の行動などに反対して被雇用側(労働組合)が労働を行わないで抗議することをいいます。ここまでは皆さんなんとなく分かるかと思います。
ようは、「働くことを集団で拒否する。」という形で抗議をすることです。
そんなことをすると、例えば「1日の売り上げがなくなった!」ということで、損害賠償など色々訴えられないのか?というご不安もあられるかと思いますが、正当な争議行為もしくは正当な組合活動であれば、民法上も刑法上も違法性はありません。
そもそもまず、我が国では労働者に労働三権というものが法律で認められています。労働三権とは以下のものになります。
労働三権について
①「団結権」
ひらたく言うと、労働組合を結成すること。組織となることです。
②「団体交渉権」
労働組合が企業に団体交渉を申し込む権利。企業は労働組合からの団体交渉申し入れについて、正当な理由がない限り、原則断ることができません。この団体交渉を通じて、労働組合は雇用の確保や労働条件の維持、向上について企業と交渉を以って問題解決を図ります。
③「団体行動権」←ストライキはその権利をここで保障されている。
勤務時間や給料などの労働条件を正当に実現するよう求めて集団行動を行う権利。抗議デモや、今回のストライキ等が含まれます。つまり、↑の団体交渉のほかにも労働組合は法的に守られた立場にいながら、ストライキ等の団体行動を以って問題の解決を図ることも可能なのです。
ストライキは労働組合の持つ正当な権利だが、最終手段である
考え方はそれぞれありますが、筆者はストライキについては労働組合が争議を解決する術としての最終手段だと考えています。ストライキについては、法的にその権利は保護されているものの、仕事はしていない訳ですから「無給」となります。
また、正当な行為とはいえ、実際に労働組合として集団で仕事を行わないという性質上、ストライキを行った企業や組織の運営は事実上ストライキ期間中はストップすることになります。
企業運営が正常に行われないため、当然ながら使用者側のデメリットは信用失墜や経済的な問題も含めて多大なるものがありますが、労働者側にとってもその期間中は無給となることや、ストライキの結果もしかすると、取引先企業からの取引停止などが発生し、更なる問題が発生する懸念もあります。
なので、ストライキを行うに当たっては、労働組合も正当な権利ながら相当な覚悟がいるのです。
したがって、団体交渉を尽くしてなお、使用者側の理解を得られない場合や、今回のそごう・西武労組のように使用者側が労働者の雇用や権利を脅かす行為を強行してきた場合の最終手段となる訳です。
我が国すべての経営者に言いたい、あなた達次第でストライキは回避できる
上記で説明したとおり、ストライキは労働者側としても出来れば行いたくない最終手段です。現に前述したとおり、我が国では大手デパート業界では約60年振りのストライキとなりました。
今回そごう・西武労組もいきなりストライキを決断した訳ではありません。その前には粘り強く団体交渉権を以って、会社側に今回の売却問題について誠実な回答と対応を求める交渉を幾重にも行っています。
その結果として、本当に苦渋の決断だが勇気を持ってストライキの決行を決意されています。
経営的な事情はあるにせよ、従業員に対して誠実な説明をしっかりと行い、労使の溝が完全に埋まるまではいかなくとも、問題の解決に向かう対応を行っていれば、そのストライキはきっと回避できたはずです。
『売却前に、今後についてのきちんとした説明がない。雇用が守られなくなる可能性がある』と、そごう・西武労組の組合員の方が一部報道で述べられていました。
筆者もこのように、労働者が使用者と話すために設けられた「団体交渉権」そのものが脅かされる行為があり、雇用もなくなるかもしれないという状況では、苦渋の末ストライキを決断する可能性は高いです。
ここで声をあげなければ、労働者の権利はおろか、明日の生活すら脅かされることになります。
ストライキの起きない労使関係の構築と環境こそが理想
前述したとおり、ストライキは労使双方にとって痛みの伴う可能性が強いものです。
このように労使が対立する構造を生み出さず、労使が手を取り合い課題を解決し、双方が発展していく形になることが理想だと筆者は考えます。
多くの労働問題、特に企業と労働組合間における協議については、経営者側に対応可能なものや判断する裁量があるもの(例えば今回のように、雇用の問題や多くの労働条件にまつわる話)がほとんどです。
「雇っているのになんで文句を言われないといけないんだ」「わがままいうな」ど一蹴せず、同じ組織で働く仲間であるという目線を持って、使用者には労働者と手を取り合う経営をしていただくことを切に筆者は願うばかりです。
最後、そごう西武労組の皆様に激励とその勇気への称賛の意味をこめて、声を大にして、
「労働者の権利を守るためにがんばれ!!」
とエールを送る次第です。