2ヵ月半後を入社日とする採用通知後、人員削減を理由とする採用取り消し

■解決年月:2006年11月 ■職種等:営業/正社員
■勤続年数:就労前 ■男性

ハローワークの求人で、採用面接を受け、2ヵ月半後を入社日とする採用通知書を受ける。その後、入社後住むことになる社宅の見学をし、引越し準備を進めているところに、人員削減を理由とする採用取り消し通知が送られた。
ハローワークを通じて幾度も事情説明を求めたが、権限のない事務員に対応させ「社宅見学の時が2次面接だった」などとの報告をし、引続きハローワークに求人票を提示していた。労働者は労働局にあっせん申請したが、会社が拒否したため打ち切りとなり、裁判を検討しているところで、ユニオンに相談し加入となった。
会社の採用通知の時点で労働契約が成立することは、今日、判例、学説等で殆ど異論のないところであるので、採用取消は解雇と解することができる。したがって、採用取消は会社に留保されている解約権の行使が認められる場合か、社会通念上合理的な理由による解雇に限って許されるということになる。経営悪化が理由の取消についても、整理解雇4要件に照らして検証されなければならない。
採用通知を受けて、前の職場を退職したという事情もあったので、採用取消理由の説明と求人票記載の賃金を基礎とする損害賠償、謝罪、解雇予告手当の支払い等を要求した。
会社は当初、団交拒否の姿勢であったが、再度の団交申し入れに対し、求人票記載の賃金は各種手当込みであり、基本給は約半額、これを基礎賃金として予告手当相当分を支払う旨を書面回答した。3度目の団交申し入れで、金額を増額したが、団交は依然拒否を続けた。電話での抗議、説得により、誠実に対応する姿勢に転じ、団交に応じた。 組合員への採用通知後、ベテラン社員の大量退職などで、事業の正常な運営に支障をきたし、財務状況も急激に悪化したため、新人の採用が不可能になったという事実は認められた。会社の謝罪と解決金上積みの回答があったので合意した。