「有印私文書偽造」を理由に諭旨解雇
■解決年月:2007年10月 ■職種等:営業/正社員
■勤続年数:13年9ヶ月 ■男性
「有印私文書偽造」を理由に諭旨解雇を通知した。退職金規定は、諭旨解雇の場合は退職金全額不支給と規定していた。
団交で会社は、融資証明書の改竄が「有印私文書偽造」に該当すると主張したが、組合は、融資証明書の有効期間を訂正したにすぎず、「有印私文書偽造」には当たらない。また、仮に諭旨解雇が有効であったとしても、退職金の全額不支給は行き過ぎであるとして、諭旨解雇の撤回と退職金全額支給等を主張したが決裂し、労働審判を申し立てた(組合が申立書作成して本人申立)。
審判委員会は、諭旨解雇は正当であるが、退職金全額不支給は行き過ぎであり半額の支払の調停案を提示した。労働審判委員会の判断には不服であったが、早期解決を優先し、調停案を受け入れた。
この審判委員会の判断は以下の点に問題がある。
- 裁判官は、融資証明書の有効期間の訂正は”改竄”ではなく”改造”にあたると判断した。つまり、「融資証明書の改造」が会社の言う「有印私文書偽造」に相当するかどうかは曖昧のままである(対象行為の特定がされていない)
- 仮に「有印私文書偽造」にあたるとしても、社内規定のこれに対する懲戒処分は「出勤停止が適当」としているにもかかわらず、諭旨解雇を適用したこと(懲戒処分の程度)
- 懲戒処分の手続き(弁明の機会など)、これらについて、十分な審理もせず、それより数段重い諭旨解雇を正当と断定するのは、やや短絡的な判断と疑わざるを得ない。
前回の某事件の際の労働審判委員会の判断と合わせ、問題が残るものとなった。それだけに、解決手段としての労働審判の活用については慎重に判断しなければならない。