最低賃金違反の未払い賃金の請求

■解決年月:2016年8月 ■職種等:調理補助 ■勤続年数:3年  ■ 女性 パート

組合員は、飲食店(仕出し)の調理補助として、平成23年4月に採用された。事業所は家族経営で、組合員は、ただ一人の従業員であった。採用時の労働条件は、調理補助で時給600円との口頭確認のみで、季節と注文数により、労働時間は日ごとに違い、月間総労働時間は50時間から200時間まで幅があった。いうまでもなく時給600円はその年の最低賃金を下回っていた。

組合員は平成26年12月に退職した後、最低賃金違反を知り、平成28年5月に労基署に申告した。労基署の調査は平成28年7月となったため、最賃違反を申告した期間のうち直近6カ月間しか賃金請求権は存在しなかった。

労基署の調査に対し、使用者は、時給は労働者からの希望に合わせたと抗弁し、既にタイムカードを処分済みで過去の労働時間は分からないと回答した。その後、使用者は労基署に対し4万5千円の分割支払いの意向を示した。

そこで、組合員はユニオンに加入し使用者に書面で賃金支払いを要求した。申し入れの際、タイムカードが存在していることが判明したため、労働時間の検証を行うことを要求した。一方、ユニオンは労基署に対し、未払い賃金の確認の根拠の説明を求めるとともに、時効の延期、タイムカードの記録に基づく労働時間の算定及び未払い賃金の一括払いを申し入れた。また、使用者が労基署指導に従わない場合は、告訴することを伝えた。

その後の労基署の指導により、使用者は、10数万円の未払い賃金の一括払いを労基署に回答したため、組合員はそれを受け入れることで決着した。賃金請求には2年の時効があるため、早く察知し時効が発生するような事態であれば、内容証明郵便で請求しておくことが必要であることを痛感した事案であった。